降って湧いたように土曜日から四連休になってしまったので、久しぶりにダムを見に行くことにした。今回は以前から行こう行こうと思いつつ先延ばしにしていた滋賀県方面を攻める。
「ダム」というものに妙に心惹かれてしまう。巨大建造物が醸し出す魅力のようなものに中てられているのかもしれないし、あるいは「どんな巨大で困難なプロジェクトでもステップを積み重ねればいつかは完成するのだ」と励まされるような気持ちになるのかもしれない。仕事で行き詰まった時なんか、気分転換にドライブがてらダムを見に行くとなんだか心が晴れるのだ。
それに、最近はダムを見学にいくと「ダムカード」というものがもらえたりする。これがコレクター魂に火をつける側面もある。
先の台風によって、「ダム」というものーあるいは治水とそれに関わるインフラというものーーに対していろんな”物語”が語られようとしている。そんな人による”物語”はどこふく風とでも言わんばかりに、ダムはただそこにある。
■永源寺ダム
基礎知識として、ダムというものは一般に「コンクリートダム」と呼ばれる、コンクリートを固めて作るダムと「フィルダム」と呼ばれる土や石を積み上げて作るダムに大別される。*1
概ねどちらかの形式一本でダム本体は作られるのだが、諸般の事情によりこの二つの形式を組み合わせた「複合ダム」といったものが存在する。
この永源寺ダムは上記の「複合ダム」と呼ばれるものだ。右岸側*2が石を積み重ねたロックフィルダム、左岸側がコンクリートダムとなる。
個人的には、ゲートの赤色がアクセントになっておしゃれだと思ってる。
■蔵王ダム
こちらは上記の分類でいうところの「フィルダム(ロックフィルダム)」だ。各種説明によると監査廊(ダム内部を点検するために職員が通る専用通路のようなもの)がダムの中心軸からずらして施工されるという珍しい形式……らしいがいかんせん内部構造の話なので外からはわからない。
個人的には洪水吐(ダムに溜まった水が溢れないよう下流へ流す設備)の曲線が美しいと感じた。コンクリートなのに柔らかさを感じるこのラインはとても綺麗だと思う。
■青土ダム
今回、どうしても見たかったのはこのダムである。
なんといっても洪水吐のデザインが独特だ。なんというか、吸い込まれそうになる。
だいたいダムというのは下流側から……つまりは「そびえ立つコンクリートの壁」のようなものが鑑賞(といっていいのか?)の対象になりがちだが、この青土ダムは洪水吐に水が吸い込まれていく様子を見ていくだけで飽きない。上流側が鑑賞ポイントになる、という意味で珍しいダムだ。機能と美的感性を両立した、非常に素晴らしいデザインだと思う。
ダムというものは決して量産されるものではなく、基本的にはその土地土地にあわせて作られるワンオフ製品のようなものである。
ただそこにあるワンオフの建造物……しかしやはり、そこに私たちは”物語”を見出そうとしてしまうようだ。
ダムの科学 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 一般社団法人ダム工学会近畿・中部ワーキンググループ
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る